突然の嘔吐~異物誤食による腸閉塞~治療(手術写真あり)

腸閉塞の術後の麻酔覚醒は長引くことが多いものです。

食餌が摂れなく、嘔吐で脱水と電解質の喪失があり、身体が消耗しているからです。 炎症を起こした腸ではbacterial translocationといって腸内細菌が悪さをすることもあり、治療が遅くなるほど麻酔のリスクと入院期間が増します。

診断編でも取り上げたネコさんはオペで異物を取り除きました。負担のない診断と早期治療のおかげで体力的にも余裕があり、麻酔覚醒は良好で入院も36時間ほどで済みました。自宅で回復を図れるのは何よりです。

腸内の異物と充血した小腸
異物摘出
猫の小腸は細いので縦切開をそのまま縫合するとさらに細くなってしまいます。そのため縦に切った創を横切開のような向きに直して縫合することがあります。
異物は厚いキャンバス地のストラップでした。輪っか状になって完全に塞いでしまったようです。広げると写真のような感じでした。黒いのは長期間胃内にあった証拠です。

抜糸を迎える頃には元気すぎて診察が大変なほど。飼い主さんも苦笑いでした^^)

ちなみに術後経過もエコーでチェックしてあげるとより安心です。縫合糸は溶けて無くなる糸ですが、結び目に腸管由来の菌が付いてしまい、炎症を起こす可能性があります。術後認める腸管周りのモヤモヤがクリアになっていけば大丈夫。

術後1週間。腸管周囲の脂肪組織にモヤモヤ残る。
術後間もなく。腸管も腸管周囲の脂肪組織にもモヤモヤ、かすれた画像。
腸管自体も周囲の脂肪組織も明瞭に。縫合糸が見えますがその辺りもきれい。
上の画像から3日後。腸管自体も周囲の脂肪組織も明瞭に。縫合糸が見えますがその辺りもきれい。

この子はご飯の食いつきがいまいちだったのですがお腹の所見は改善を示していたので薬入りのごはんが嫌なのだろうと除いてみるとガツ食いでした。

突然の嘔吐~異物誤食による腸閉塞~負担をかけずに診断

嘔吐の原因は様々ですが、誤食したものが小腸に詰まって生じるケースは早くに発見して、適切に治療してあげれば、完全回復します。

このネコさんはレントゲンの単純撮影ではイレウスの所見が明確ではありません(十二指腸のガスはヒントにはなっています)。腸閉塞|イレウス|レントゲン腸閉塞 イレウス レントゲン
ここでバリウムを飲ませて検査するのが従来のやり方。でも、そもそも吐いているのでバリウムも吐いてしまうし、肺に誤嚥すると一生残ります。ガストログラフィンもオペまで行ったときに少し都合がよくありません。何より、嘔吐と食欲廃絶で弱っている子に無理やり飲ませるのが全く好きではありません。

そこで超音波検査で画像診断してみます。経験を積むと、検査開始から2分以内で診断できます。この子は5秒で見つけ、2分で完全閉塞状態(手術の必要性)を確認しました。
嘔吐|腸閉塞|診断|超音波/エコー
異物による腸閉塞の診断精度は私の場合、
1回目の検査(5分程度)で診断が確定する確率が97.7%
2回目までの検査で診断が確定する確率は100%となっております。
異物と診断して間違ったことは今のところありません^^)

付き合っていく病気でもなければ、治療期間も長くないので、診断したときは手術が必要な状況を残念に思う一方で、急激な回復が約束できるという点で明るい気持ちにはなります。飼い主さんもなんで吐いていたかあっという間に判明し表情が明るくなっていました。

内覧会のお写真データ差し上げております

4月22日(土)にカメラマンに写真を撮ってもらった方は見出しプリントとデータCD-ROMができております。
(下に続く)

アクアどうぶつ病院|内覧会|多くの方にお越しいただきました。ありがとうございます!

4月に開催いたしました内覧会にお越しいただいた皆さま、ありがとうございました。おかげさまでとても賑わって、スタッフや関係者一同、大変嬉しく思いました。

4/22にカメラマンが撮影いたしましたお写真はデータを差し上げております。まだお受け取りになられていない方は、遠慮なくお越しいただければと思います。かかりつけの先生が別におられても全く気になさらず、お写真の受け取りだけで結構です。ぜひ、どうぞ。
アクアどうぶつ病院|内覧会|子供用白衣を着た小さな「先生」